重力ピエロ (2009)

文字数 688文字

【最強の夫婦、最強の兄弟そして最強の製作者】 2009/11/1



おかしなタイトルのミステリーだったことを覚えていた、原作のことである。
「重力」と「ピエロ」はなにをメタファーするのか?と興味があった。
いきなり「春が2階から落ちてきた・・・云々」のイントロインパクトも記憶に残っていた。
ただし、そのあとの展開、肝心の謎解きのカタルシスはほぼ覚えていない。

これは伊坂ワールドの典型かもしれない、
そこに僕は「突き詰めない美学」を感じていた。
その伊坂ワールドのシネマ化が近年目白押しだ。

著名原作映像化はシネマ快楽のひとつのジャンルだ。
原作ファンを取り込める、それ以前にストーリー作りに悩まない利点がある。
その一方で、安易なシネマ化はこれらアドバンテージを相殺しかねない。
早い話が、クリエイティビティ欠如だ。

本作品は前述の「突き詰めない美学」が危ういほど全編の流れを阻害しているのが半分。
後の半分は主人公兄弟の両親がまた別の支流を作って、より豊かな流れを創りあげたことだ。

「突き詰めないミステリー」を映像化する困難は、
偉才の加瀬、岡田の若手が尽力すればするほど強まる。
すっかりプロットを忘れた僕には、
二人の映像化された行動がミステリーを遠く離れドタバタにしか見えなかった。
無論彼らのせいではない・・・これが伊坂ワールドの真髄なのだから。
この窮地をカバーしたのが小日向、鈴木の夫婦物語だった。
お二人に「上手だ」とは失礼かもしれないが敢えて「最強の夫婦」だったと念を押したい。

こんな夫婦、こんな両親が残した兄弟はむろん最強だ。
つまらない「原作映像化」に陥らなかった製作者も最強だったんだろう。


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