君が生きた証 (2014)

文字数 548文字

【虚をつくサスペンス】 2015/2/25



途中まで真実が知らされない一種のトリック状態のもと、僕は父親の嘆きに共鳴していた。
やりての広告会社社長の父親と大学構内乱射事件で死亡した息子。
ご丁寧にも、父が誘ったランチに来なかったため死亡した設定も
僕には父の悔恨の深さを増幅するものに思われた。
父親は仕事をやめ家を売り、その日暮らし、酒に入り浸る。
ある日、息子の残した曲を聴き、その歌を場末の店で披露する。
その歌の魅力に引き込まれた若者が彼のもとに集う、
もっと歌をひろめましょう・・・・と。

これらがメイシー監督の仕掛けだと分かるのは物語の終盤になる。

ネタバレというほどでもないのかもしれないが、
この種の叙述的トリックは上手く壺に嵌まると効果は大きい。
真実は、息子は6人を射殺して死んだ犯人だった。

そこで僕は混乱してしまう。
息子を亡くしたことには変わりわないだろう?
息子の作った曲が愛されてはいけないのか?
しかし、
そんな殺人者の歌を歌っていいのか?
人間の道に外れていないか?
・・・と、勝手に人を裁く自分にも気づく。

美談だと思っていたプロットが無残にも崩れていく。
すべてを失った父親が、
最後に息子の未完成曲を完成させ、息子に呼びかけるように歌い上げる。

体の内側から揺るがされるようなサスペンスシネマだった。

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