散り椿 (2018) 

文字数 711文字

【椿三十郎以来の衝撃】  2018/9/28



製作が決まると撮影前1年かけてロケ地の四季折々を撮りだめする木村大作監督らしい
美しい日本の昔の風景がスクリーンに。
時代劇にはそんなシーンがよく似合っていた。

公開前番宣では岡田さんの殺陣がかってのチャンバラスターたちに引けを取らない、
いや超えてすらいるとのことだった。
当然、僕はそんなスーパー殺陣を期待する。
シネマは、木村監督のお墨付きの通り冒頭から華麗なる殺陣、
パワフルな殺陣、怒りの殺陣、の連続。
VFXの進歩も伴って血しぶき,血糊の大盤振る舞い、
スーパー殺陣は自慢するだけのものはあった。

かって、黒沢監督が「椿三十郎」で血しぶきをポンプで噴出させたことを思えば、
時代は大きく変わってきたものだ。
そのラストの決闘殺陣に驚いた以来久々に殺陣に感激した。

ただし、物語トータルの価値からすると、椿三十郎には全く及ばなかった。
お家騒動自体が権力層の醜い争いでしかなく、
死をもって藩に尽くす滅私奉公になじむことができず、
一人の女性を巡る愛と苦悩もあまりにカジュアルすぎた。

主演の岡田准一さんや ライバル(西島秀俊さん)にその責任はない、
映像で理解してもらうはずの人間性設定が浅かった。
この傾向は一事が万事、悪役家老(奥田瑛二)もナイスガイ若殿(渡辺大)も
信奉者の若侍(池松壮亮)も類型的すぎた。

もっともこの類型は類型として楽しめるから問題はなくもないのだが。
渡辺大がNHK 「西郷どん」の斉彬藩主を真似てみたり、
池松壮亮が「ラストサムライ」で見せたヒーローへのあこがれを
再現したり、僕はひとりで悦に入っていたのだった。

もうこうなったら、
岡田准一主演でストイックな椿三十郎を見たいものだ。

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