バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014) 

文字数 776文字

【ハリウッドの逆襲】 2015/4/19



ハリウッドシネマ vs ニューヨーク演劇の「メンツ抗争」を
メキシコの叡智で大胆に描いた愉快なシネマだ。
イニャニトウ監督の知性とアイロニー、
ルベッキカメラの饒舌に目が回るひと時を楽しませてもらった。
主人公を演じるマイケル・キートン本人の経歴をなぞる様な役柄が先行話題になっていたが、
それ以上にハリウッド業界の楽屋落ちジョーク、
それも自虐ジョークオンパレードに大笑いさせてもらった。

すべてはハリウッド人のNY演劇界へのコンプレックスが発端なのだろう。
ハリウッド族は下品で傲慢で、演技の基本すら知らない
・・・・これは主人公に吐き捨てられるように伝えられるNY批評家の言葉だ。
加えて、三顧の礼で招聘した舞台俳優からも、主人公の脚本、役作りを罵倒される
・・・舞台の上にのみ真実があるのだそうだ。
生涯をかけた主人公の起死回生のブロードウェイ公演は、
このような絶体絶命のピンチの中でスタートする。
襲いかかる数多のトラブルの最中、主人公に常に囁きかけるのが、
彼の別人格にもなってしまったヒーロー「バードマン」。
バードマンは主人公の恨みの詰まったハリウッドの象徴なのに、彼に付きまとって離れない。
『もう一度ヒーローになろうぜ!』と誘惑するバードマン。

「ハリウッドの逆襲」が始まる:
シネマはCGフェイク満載の偽物で、舞台はすべて本物なのか?
ハリウッドスターだから、裸散歩がツイラン上昇するのではないか?
ブロードウェイの楽屋はチンケで汚い!
舞台俳優の誰を知っている?
ブロードウェイ演劇を観るのは老人ばかりだ!

主人公は究極の選択として、真実を舞台で貫く。
その迫真の暴挙は、しかしながら、
「無知」から転がり出た「まぐれ当たり」と評価される。

結局のところ、ハリウッド村とニューヨーク町は共存できない。
なるほど、アカデミー賞の宣戦布告だった。

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