ぶどうのなみだ (2014)

文字数 763文字

【大泉さん 依然進化中】 2014/10/14



ファンタジー物語だからとしても、おかしな扮装の警官や郵便配達員が登場する必要はない。
しかし本シネマは北海道振興目的の一環、ファンタジーではないと思う、実際「空知」の地名が頻繁にPRされている。
なぜ、このような仮装としか思えない衣装を選んだのか気になって、冒頭からシネマの本質に疑問を抱いてしまった。
その他の登場人物は、シネマテイストに近い自然系素材のステキな洋服だったので余計目立ってしまった。

衣装に代表されるように、リアリティ表現に振幅が激しすぎるところが随所にみられた。
台詞回しをアドリブで俳優に任せたような演出なのか、あるいは貧弱な台詞を強いられたのか会話に硬さが見られた、これも随所に。
ベテラン俳優も戸惑っていたようだし、役者本職でない者にとっては起用の狙いである異質な雰囲気を出す以前の躓きになっていた。

おそらく、本シネマは親子(父と息子、母と娘)の絆の復活をモチーフにして、そこに空知の自然とワインをからませたのだろう。
いたるところに、自然(空、大地、植物)を意識するカットが挿入される。
長い被写界深度を多用したブドウ畑と主人公のカット、ずばり色づく「葡萄」の美しいスチル、しかしくどくなってしまった。
そのせいもあるのか、長回し撮影、もしかして切れの悪い編集に終始していて、顧客であるはずの観客は緊張を維持するのがつらくなる。

タイトルのイメージなのか、雨粒のスロー破裂CGも、繰り返し見せられると鮮度は一気に下がってしまう。
なによりも、ワインの味を絵で表現するのは難しい。
大泉さんは、けなげにもそれに演技で挑戦していたが、作り手本人の評価では説得力も達成感も伝わらなかった。
それでも、
大泉さんが、本シネマにおいても依然進化中であることを確認できたのが唯一の収穫だった。


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