デトロイト・メタル・シティ (2008)

文字数 658文字

【訣別のラブソング、哀し】 2009/3/15



松山ケンイチが観たかった。
公然猥褻カットと称するマッシュルームヘアーで、正統アイビーファッションを着こなす彼を観た。
どう評価もしようのないメタルファッションで歌舞伎隈取メイクの彼を観た。

内股小走り、シスターボ-イ走りの彼を観た
ケープをなびかせ咆哮するアスリート走りの彼を観た。

タイトルどおりの甘~いGSボーカル再現の彼を観た。
タイトルどおりの地獄叫びのメタルボーカルの彼を観た。

とはいえ、
松山ケンイチの演じ分けが特別上手とか画期的ということもない。
劇中での変身を演じるのだから当然といえば当然。
それでも彼を観ていると、日本映画の未来に少し夢が持てる。
本シネマのモチーフも「主人公の夢」。
表現者とプロデューサーの争い、葛藤がそのモチーフ底辺を支えていて、
たわいないストーリーにいく分厚みが加えられていた。

なにやらいんちきクサイ自称「プロデューサー」が跋扈する現代を皮肉るかのように、
主人公はこの種のカナ文字職種に翻弄される。
プロデューサーは勝手なもの、自分の思い通りにしたいもの。
主人公は2種類のプロデューサーに人生をもてあそばれ、いっとき挫折する。

彼がすくなくとも人生をやり直そうと決意したその機軸は
「他人の夢を実現する」喜び、いや使命感か。
そう、仲間や友達のためにならひ弱な主人公でも頑張れる。
お金のため、権力のため、名誉のために頑張るのはあまり品がよくない。

その決意、
自らの夢との訣別として歌ったメタルメイクでのラブソング
・・・・笑いが凍り付いてちょっと哀しかった。
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