今宵、フィッツジェラルド劇場で (2006)

文字数 772文字

【歌う俳優たちにもう一度拍手】 2007/7/21



ストーリーは、劇場公開生ラジオ番組の「ラストショウ」に集うスタッフの人生模様。
《本日限り》とは至れり尽くせり・・・シネマとっておきのシチュエイションには違いない。
芸人さんと裏方さんに名優がすらりと配され、ここは本作の観所だ。

生放送、それも劇場公開の緊張感と、それをこなしていくプロの職人技を満喫できる。
シネマの始まりで、まるで絵に描いたような「客車タイプの食堂」がキラキラ輝きながら宵の暗闇のなかにデンと現れる。
私立探偵のモノローグがかぶさりながら、その探偵が食堂から出てくる。
おやおや、柱でマッチを点灯させたりしちゃって・・・・。
ハイセンスコメディらしいイントロだけど、一抹の非現実感、浮揚感が漂ってくる。
そう、
これはロバート・アルトマンの遺作、
今観かえすと、なにやら黄泉の国の趣さえ感じさせるシーンだった。
「老人の死は決して悲劇ではない」
「エンターテイメントに死は似合わない」
エンジェルがあの世から迎えに来る?
など、思わせぶりもいっぱい。

題材も然り、消え去り往く「古きよきものたち」を、
いくぶんシニカルに眺めるアルトマンの目線を感じた。
無駄な抵抗をしても仕方のないこともあるさ・・・ってメッセージだったのかな。
最後まで熟成し続けたアルトマンだ、改めて尊敬した。

そんなちょっと湿った空気を吹き飛ばしてくれるのが、
俳優たちの歌、ソング、熱唱だった。
みんな歌がうまい、予想外だったのは皆自信を持ってベテラン歌手を演じきっていること。
そんなの当たり前なんだけど、
照れたり怖じ気づいたりの・・・・
「あの~これは本業じゃないけど」信号が微塵も出ていない。
たとえばメリル・ストリープ、
彼女の役作りには当然のように「歌うことが命」のヨランダが刻み込まれていた、 
ブラボー。
歌う俳優たちにもう一度拍手、拍手。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み