悪の法則 (2013) 

文字数 893文字

【マッカーシー文学の産直シネマ】 2013/11/15



コーマック・マッカーシー最新作で且つ異例の書き下ろし脚本。
マッカーシーはアメリカの現代文学を代表する作家と言われてから久しく、
ノーベル賞候補としても近年話題になっている。
ただし、彼のテーマは人間の心の奥に潜む「悪」、その闇を容赦なく晒していく。
ともすれば過激な描写も多く映像化も苦労するのである
・・・「ノーカントリー」では奇怪な殺し屋の恐怖が印象的だった。

そのマッカーシーが、小説をスキップして、いきなり脚本を書いた。
通常、原作とシネマには越えがたい埋めがたい山谷があるものだが、
本シネマでは映像そのものが文学になっている。
確かに登場人物の台詞が長く難解なところが散見され、理解しようとする努力が重荷になる。
その一方では、心理的恐怖を伴う強烈な残酷シーンが思索を断ち切って割り込んでくる。
中でも一番戦慄を覚えるのは見えない敵からのプレッシャー、そこに生じる想像される恐怖。

監督はリドリー・スコット。
なんでも軽やかにこなしてくれる職人監督だが、ここは十八番のスリラーで僕を魅了する。
今シネマではメキシコを舞台にしたコロンビア麻薬カルテル代理戦争に巻き込まれる
弁護士のケイオスを創り出した。

熱愛する妻(ペペロネ)のためにちょっぴり「欲」を出して
闇の世界に足を踏み入れる弁護士をファスベンダーが好演している。
マッカーシー作品再登場のハビエル・バルデムはチョイ悪実業家、
今作では恐怖に追われる側にいた。
ブラッド・ピットはプロ犯罪者として余裕と達観をこれまた好演、アシストしている。
不可解で冷徹でネジのはずれた悪女を演じたキャメロン・ディアスは今シネマのMVPだ。
キャメロン発するラストの一言に僕は凍り付いてしまった。

オリジナルタイトルは「カウンセラー(弁護士)」。
国選弁護士を不承不承引き受けたことがストーリーの大きな伏線になっている。
そこから、本気で悪の世界に染まるつもりもないカウンセラーが、
悪魔にがんじがらめに絡め取られていく。
もしかしたら本シネマは、カウンセラーに対するある種の遺恨晴らしなのか。
アメリカの弁護士の実態が想像できる。

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