望み (2020)

文字数 861文字

【愛は脆いもの】2020/10/9



「明日の記憶(2005年)」以来 問題提起型の堤フィルムを陰ながら応援している。
ミステリー( 「イニシエーション・ラブ」)、にしろ、アクション(「天空の蜂」、「真田十勇士」)にしろ、そのジャンルではひと悶着を引き起こしてきたシネマばかりだが、僕の好みだ。

そして今作では原点に戻ったかのような、庶民の家庭に巣食う根源的な危機を、
今更ながらではあるが取り上げてくれた。
それは「犯罪にかかわった家族の悲劇」、加害者であれ被害者であれ家族が事件に巻き込まれる恐ろしさを地べた目線で丁寧に説明してくれる。

予告編で否が応にも、僕はその家族の葛藤を知らされてしまう、もともとシネマ鑑賞には予断を入れないことにしているが、シネコンでの予告編にまで目を閉じることは難しい。
予告編はこう煽ってきた:
《 一人死亡、容疑者二名が逃走中の事件、息子がそのうちの一人らしい、そのひとりも殺された模様 》
《 その息子からは連絡がない、犯人でいいから生きていて欲しいのか? 犠牲者(犯人ではない)の方がいいのか? 》

今シネマを観るにあたって最初から選択を迫られている気持ちだった、
「お前はどっちを選ぶ」。
ヘビーなシネマファンたる僕は、第三の選択肢があるに違いないと期待した、それこそが堤フィルムの魅力だから。

シネマは、見事なまでに予告編のとおりに進行していく、そして仲の良い理想の家族に化学変化が生じる。
極端なマスコミ取材、ネットでささやかれる嘘・デマ、お決まりの住宅への落書き、そして父の仕事が無くなり・・・母は、妹は。

はたして僕の予想した思わぬ展開があるのか?
結末は是非とも劇場に足を運んでいただきたい、
(シンコロ対策の万全な安全な娯楽だから、シネマは)。

どこにでもいる家族が被る予期せぬ社会からの攻撃、
それをはねつけることのできないどこにでもいる家族。
これは僕ら一人一人の今そこにある危機であった。
平凡な家族の地べた目線で語られる悲劇、
オープニングとエンディングな高度からの映像はいったい誰の視線だったのだろうか?
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