天使が消えた街　（２０１４）

【プライベートシネマですよね？】　2015/9/10



ウィンターボトム監督、ご無沙汰していました。お元気でしたか？
どうやらそうでもなさそうですね。
暴力や殺人の映画を撮りたくないのでしょう？　あなたの分身ですね、本シネマの監督が悩んでました。

素材は《ペルージャ英国人留学生殺人事件》だそうですが、僕は知らなかったけど英米で話題のスキャンダルだったようです。
この事件はメディアが競って取り扱ったそうですが、あなたは映画化を進めていたのですね。
でも本作は、その意味では本編未満の完成度ですし、ドキュメントの形態もなしていません。
いったいどうしたのでしょうか？

ラブストーリーとして映像化すると決めたあなたですが、実はあなたには愛の真実を確信することができなくなっていました。
不実な妻への憎しみと、愛する娘への無償の愛の狭間に蠢く自らの罪の大きさに潰されてしまったのでしょう。
そして殺戮の現実を受け入れる勇気すらできなくなったのでしょう。
ダンテの「神曲」に逃げ込もうとしながら、神を信じることもなく最後は背徳に浸ってしまう弱さはもしかして現実のあなたの投影なのでしょう。

現実の事件は昨年最終判決が出ました。
この本編のような、メイキングドキュメントのような映像は、その鎮魂歌にもなり得ません。
僕にはあなたのプライベート映像としか思えなかったのです、残念でした。