アメリカン・ギャングスター (2007)

文字数 826文字

【ゴールデントライアングル】 2008/2/2



シネマのゴールデントライアングルにいざなわれた。

①麻薬ゴールデントライアングルから直接ヘロインを買いつけ、
 米兵の遺体の中に隠匿して密輸 した・・・という伝説の黒人ギャングスターを演じる
 デンゼル・ワシントン。
②NY麻薬取り締まり警官をほとんど告発した、これまた伝説の検事を演じる
 ラッセル・クロウ。
③知られざるハーレムギャングの盛衰物語をこれほどまでに簡潔に、
 それでいて詳細にまとめきったマエストロ・リドリー・スコット。

このトライアングル、完璧なパワーを発揮している。
久しぶりにハリウッドらしい、そしてアカデミー賞俳優の権威にも納得できる作品だった。

そう、
ビジネスとして麻薬密売を起業しマーケットの秩序と繁栄に暴力をも辞さないギャングの頭目。
ベトナム戦争の混乱に乗じたとはいえ、予見能力、アイデアその行動力は瞠目に値する。
くわえて自らの無名性を維持しながら、成功におぼれない自律心もギャングスターの名にふさわしい。
デンゼルが演じると、悪人も爽やか過ぎる印象の危険性があるが、
ここはスターを崇めたいファン心理をくすぐる?

かたや、賄賂に屈しない警官。
検事の資格を夜学で取得するガッツなエピソードもきっちりと描かれていて、
警官お決まりの家庭崩壊の暗さと対照的に、仕事享楽人間をラッセルが上手に見せてくれた。

この二人のように努力を惜しまず、常に工夫をし、慎重でいて大胆な人間を僕は好きだ。
犯罪者や家庭不適者を認める倫理は持っていないが、彼らのひたむきさは認めたい気持ちだ。
もっとも、所詮シネマのお話、そう肩肘張ることもあるまい。

最後のナレーションが本シネマを的確に表現している;
曰く、
「ギャングスター麻薬密売の罰70年の刑期を15年に短縮したのは、
 その後弁護士に転職した告発者、検事だった・・・」
なんと本作のテーマは、二人の努力家の友情に昇華していた。
うまい脚本じゃーないか、敢えて反対するほど不粋ではない。

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