ポトフ 美食家と料理人 (2022)

文字数 842文字

【料理に命を懸けた相棒物語】2024/2/14


ジュリエット・ビノシュを観たくていつものように事前情報なしではあったが、大好きな料理物語であることはしっかりと確認していた。

それにしても、冒頭から延々と流される午餐会のシーンに圧倒された。
美食家仲間4人を接待する料理人のパートナー、計5人のコース料理が食材の説明から説き起こして細かな料理手順まで執拗に描かれ、そこには料理シネマに往々にして付け加えられる料理の説明は一切ない、ただただ美食家たちが実に美味しそうに食べ尽くすだけだった。

この調理シークエンスはそのあとも何回も状況を変えて繰り返される、昨年拝見した衝撃の「パーフェクトデイズ」のトイレ清掃と同じだった。
大切な仕事は何度も繰り返し、愛情をこめて遂行するものだと、改めてプロの技と業を思い知った。
  
本シネマは美食家(というか著名レストラン経営者)と料理人の愛情物語がもう片方のストーリーとして織り込まれているのではあるが、ぼくは冒頭の料理シークエンスでお腹がいっぱいになってしまった。
   
時代は19世紀末ということで、女性が表舞台に出る機会が希少だった頃の女性天才料理人という設定になっている。
オリジナルタイトルは【La Passion de Dodin Bouffant ドダン・ブファンの情熱】、美食家ドダンの食にかける物語ということだと、本シネマはすんなりと納得できるが、「ポトフ」、「美食家」、「料理人」の三題噺のようにミスリードされると、ポトフは何処へ行ったの?となってしまう。

間違いなく無意味な、どちらかというと邪悪な邦題だった、
付け加えるならば、美食家という意味があやふやだし、料理人との関係も不明な点が最後まで気になってしまった。
  
しかし、ラストシーンでそんなフラストレーションも解消する。
二人の男女は夫婦などという形式で括ることのできない、理想の相棒だった。
料理に命を懸けたパートナー物語として、心地よいカタルシスを感じた。
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