蜜のあわれ (2016)

文字数 562文字

【二階堂信者としてはパーフェクト】 2016/4/4



室生犀星自身の妄想を映像化するとこうなる。
作家は妄想と虚言で物語を文字で綴るもの、
しかし映像にすると妄想が変化する。
それをもって、ファンタジーと括ってしまうことは容易い。

室生犀星 晩年の本原作は、金魚の化身が作家の理想の女性像として非日常に登場する。
映像では、二階堂扮する赤子の尾びれが老人の、いや男の五感を妖しく刺激してやまない。
サウンドエフェクトで、金魚の跳ねる水音を効果的に流すなどの工夫もあったが、
なんといっても二階堂ふみのコケティッシュさが金魚そのものだった。
1尾30円の金魚が、高名作家を慕い、甘え、我儘放題する。
ぼけ老人の世迷いごとかもしれないが、
それを小説として鬻ぐ作家にも鬱積する暗い想いもあったのも片方の真実だった。

芥川龍之介の幽霊(高良健吾さん物真似好演)に、自分の劣等感を嘆くシーンが印象的だった。
それを云えば、大杉漣さんの室生犀星も、何らメイクなしでも、
なんとなく似ていたのが面白い。

そうなんだ、二階堂ふみさんを取り巻く演技陣が華やかだった。
他にも真木よう子さん、永瀬正敏さんたちが妄想ファンタジーに
馴染もうとしているとことろが愉快だった。

とはいえ、
本シネマは、間違いなく二階堂ふみシネマ。
彼女の肢体、姿態、表情を記憶にとどめるだけで意味がある。

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