ヒンターラント (2021)

文字数 705文字

【シネマの「恐怖の未来」を垣間見る】 2023/11/08


オーストリア・ルクセンブルク製作シネマ。
物語りそのものは第一次大戦後、ロシアに抑留されたオーストリア兵士が帰還後に遭遇する連続殺人事件、戦争前は敏腕刑事だった主人公だが心身ともに正常に戻っていない状態での捜査、「元有能」の苦悩がひとつのテーマであり、いつの世のなかであっても戦争によって引き裂かれる人間の脆さがもう一辺のテーマにあった、定番とはいえお決まりの展開でしかない残虐趣向ミステリーに落ち着いてしまった。
連続殺人ミステリー解決の謎そのものは、確かに新鮮さもあったが、シネマを統率するほどの力を発揮することないままに立ち消える。
主人公の妻との愛の復活を終始におわせながら、こちらも結局最後のシーンで観客に委ねてしまう。
本来のテーマに違いない、主人公と犯人と同僚との因縁が未消化のままにクライマックス対決になるのは顧客への心配りが足りなった。
それとも、観る個人の責任になるのだろうか、ちょっともったいない気がした。
後知恵になってしまったが、本作はすべてブルースクリーン撮影で背景が作られている、それが一番の話題だとのことだ。
冒頭から背景が異次元の趣だとは察していたが、それが最後まで続くと実際には、その違和感は無くなる、チープな画像、書割シネマと受け取ってしまった。
その代わりとしてクローズアップされた俳優の息遣いが感じられ、まるで舞台劇を観るかの様な心構えになった。
現実感のない情景の中で演じた俳優たち、もう一歩時が進めばその俳優たちもAIによって表情・動作が創りつけられるかもしれない。
そんな恐怖の未来を垣間見た思いになった。
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