リボルバー・リリー  (2023)

文字数 685文字

【殺し屋は愛国者】 2023/8/16



行定作品には死語に近い「独創性」が際立っていると常々敬意を表して拝見しているので、今回も事前情報は予告編からのみに限定し「あっと驚く」局面を楽しみにした鑑賞となった。

原作の詳細は不明だが、シネマとしての歯切れの良さがひときわ目立つ。
ラストシークエンスの罠に飛び込む主人公のアクションが、最初いくぶん間延びして感じられたが、ここもその後の大決算銃撃戦の静かな幕開けだったとあとから気づいた。

物語自体は、今は引退した凄腕の女殺し屋が愛するものを守るためもう一度銃を手にし引き金を引く・・・というありふれたもの、 そこに「グロリア(1980)」の母性愛のようなものを加味したスーパーヒロインを綾瀬はるかが熱演する。
ヒロインが立ち向かうのは帝国陸軍、その理由はというと陸軍は戦争拡大悪だという単細胞な解釈で押し切り、そこに山本五十六を 善として対立させるという、戦争反対メッセージがシネマの底に流れている、これはこれで勧善懲悪の勧めとして快感になる。

シネマはエンタテイメントであるべき、リボルバーの弾込めをする主人公を誰も狙い撃ちしないのと同じように、心地よいカタルシス のためにはちょっとくらいなら無理無茶もあり得る。
主人公の真っ白な洋服が血染めの日の丸に、そして旭日に見えてきた、愛国者は殺し屋のほうだった、とでもいうのか?

「セカチュー(2004)」で捉えられ「ピンクとグレー(2016)」で完全降伏した行定フィルムに明るいノワールアクションが登場した。
贅沢三昧のキャスティング、彼らが躍動する続編への期待が大きく膨らんだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み