ドラキュラ都へ行く (1979)

文字数 1,198文字

【ドラキュラによるドラキュラのためのシネマ】 1980/5/1



こんなドラキュラものが、いやいやこんなシネマが観たかったのですよ。
最近楽しいシネマが少ないと ちょうど悔やんでいたところ、
これは掘り出し物でした。
ドラキュラと言えばホラー映画を代表するキャラクター、
パロディも含めて多種多様な映像化がされてたけど、
今回ほどスカッとした気分になれたことはなかったね。
だいたい、バンパイアーたるドラキュラ伯爵は、
恐怖のキャラクターと言うより悲劇の人じゃないのかな?
食事は人間の血だし、昼間寝て夜しか動けず、といって死ぬことも出来ないんだよね。
それを皆で寄ってたかって十字架や木の杙で虐待するのは、可哀想だと常々思っていた。

昨年のドラキュラブーム復活のおかげで、
関根恵子の舞台(ドラキュラ)を観た時だって、もしかして新趣向が・・?
ってかすかな期待をしてたけど、
相変らずの「いじめスタイル」には落胆したものでした。
恵子ちゃんが消えたのもそのせいか・・?  
 
それはさておいて、
その時、自分だったら・・というドラキュラのイメージを本シネマに感じたもので、
これはうれしく思わないわけがない。
本作品ははパロディではなく、ドラキュラが主人公のシネマ。
”ドラキュラのドラキュラによるドラキュラのためのシネマ」というと解りやすいかな。

たとえば、トランシルバニアのお城から追い出される状況からして感動する
コマネチの為に体育館を建設するというのがその理由。
国家権力にはドラキュラといえども敵わない。
ここから本家ニューヨークにやってきたあたりのタイムスリップ模様は
ドタバタコメディになってるが、
このドラキュラはいままでのドラキュラとはちがっているんだな。

彼はあくまでも心優しい、自分の権威の失墜を嘆きながらも、
ニューヨーク市民の心の荒廃のほうに心痛めたりしてる。
そんな伯爵に恋するシンディ(スーザン・セント・ジョーンズ)。
原題「LOVE AT FIRST BITE」の通り
ドラキュラの愛の表現は「噛むこと」、
3回噛まれると(3度愛し合うと)相手もバンパイアーワールドに入るお約束がある。
3度目に噛むときシンディに了解をもらうドラキュラ・・・・
どうだ、人間よりよほど出来がいいぞって、誇らしくなったものだ。

伯爵とシンディのディスコダンシングの美しさとともに忘れられないシーンだね。
ドラキュラハンター、ローゼンバーグ博士はこの二人を邪魔しようと
典型的な横恋慕ごり押しするが、
ユダヤの十字架(?)、銀の銃弾(?)を持ち出したりで勘違いでずっこけてみせる
・・いつもは正義の味方なのにね。

思いかえせば、トレードマークの尖がった歯さえ見せなかった伯爵、
本家一族の怪奇性に悩まされる伯爵、
結婚しない女シンディを翻意させた伯爵
そうです、このように愛に満ちあふれたドラキュラシネマが観たかったのでした。
ドラキュラ役者ベストを極めたのは、ジョージ・ハミルトン。



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