風に立つライオン (2015)

文字数 620文字

【感涙警報!】 2015/3/15



「この国はどこかで道を間違えたようだ」のエンディングソングに心が揺らぐ。
国際関係理念を積極的平和主義と言いくるめて、
海外派兵、武器輸出、原発輸出外交で未来を描く我が国のことだ。

映画は娯楽であることは承知の上での決めつけであるが、
本作の教養レベルは予想以上に高かった。
志を持った医者が、アフリカで自分の使命に気づきそれに寄り添うことに決心する。
少年兵、虐殺などのポピュラーな話題を上品に噛み砕いているのは、
前述した道を誤った軟弱日本人向けなのだろう。

このヒーローをシネマでは行方不明(推定殺害)として「哀しみ」を醸成する。
追い打ちをかけるように、有能なパートナーも若くして病死させてしまう。
この不幸連鎖はこの国の人びとに「別の道」があることを気づかせるための
仕掛けだったのだろう。
しかし、今の日本人は生半可なメタファーなどには気付かない、心が反応しない。

そこへ追い討ちのようにあの「東日本大震災」ネタが襲ってくる。
アフリカの老婆が託したトウモロコシの種。
鈍い僕も、とうとうここでわが身の儚さに気づき、
世界とのつながり、それも心の連帯の大切さを感じた。

そのために、安全保障や経済が不要だとは言わない。
平和主義が万能だとも信じていない。
だがとっても心配になった、日本は大切なものを忘れてずいぶん久しいのじゃないかと。

老婆心:
政治的メタファーもいいが、ケニヤの草原、朝焼け、五島の海原には敵わない。
美しいシネマだ。

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