シッコ (2007)

文字数 1,146文字

【ドキュメンタリー特有の必殺手法】 2007/9/4



自分でも意外、マイケル・ムーア初体験だった。
いままでは話題先行で、観たように錯覚してたんだろうな。
ドキュメンタリーの旗手というだけあって、マイケルの主張がビンビンスクリーンから放射されてた。痛快なエンターテイメントとしても充分楽しめる。
そうなんだよね、
ドキュメンタリーは手法が違うだけの創作活動そのものなんだって再確認した。
以前ドキュメンタリーに主演(?)したことのある僕が言ってるのだから間違いない。

想像していた映像の過激テイスト、突撃取材の露骨は意外と少なかった。
ここにいたりマイケルシネマは洗練されたアイロニーに発展したんだろうか。
その代わり、告発している内容はとても過激、権力外に位置する僕には極みの悦楽だった。
ひと言葉にすると「おちょくりまくってる」ってとこかな。

マイケルの目線がかなり低い。
これが心地良い共感につながるんだろう。
一般アメリカ市民が疑問に思うことを、あの体型であの声で訴えられると、
マインドがコントロールされそうだ。
たとえば、
●国民皆保険の目指す先は社会主義国家、赤に注意しろって思うけど
・・・・・・本当にそうかい?
●フランスはいやな国、いつもアメリカに反対する
・・・・・・でも医療費無料、子育て支援ばっちりって本当?
●英国で医療費無料制度をなくしたら革命が起きるって
・・・・本当らしい?
●医療費無料のカナダ人と結婚するウエッブサイトがある
・・・・・・本当に?
●国から給料をもらっている医者って貧乏に違いない
・・・・・そうじゃない、良い生活してるね。
●キューバの医療設備は古いんだろうな
・・・・・・なんだ最新じゃないかい!
●アメリカ医療制度は民主主義に反する
・・・扇情的かもしれないけど、確かに国民皆保険が無い先進国はアメリカだけだ?

繰り返しになるけど、
ここに観るのは緻密に構成されたドキュメンタリー特有の必殺手法、
よく効く。
僕もカナダ、英国、フランスの実情を脳内に注ぎ込まれて、
いたく感心した。
いったい日本の医療保険制度はどうなっているの? 
高額、不平等、不効率じゃないかってね?

カナダ人が説く「余裕のあるものが弱者を救済する」「貧者の一灯」、
この教えはもう日本にはなくなったのかな?
僕ら日本人はどこかでアメリカンライフスタイルを修正しないと、
とんでもないことになりそうだ。
この際、一度日本を素材としたマイケルの作品を観てみたいものだ。

TV番組で充分事足りるドキュメンタリーをしぶとく創り続けるマイケル。
TVで放映するには敵が強大すぎるのだろう、
何せ今回の相手は一大金融コングロマリットの保険業界だしね。
その意味からも、本シネマは観てインスパイアーされるタイミングが大事だろう。

日本人こそ「今観る時」と思うけど。
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