蜩ノ記 (2013)
文字数 800文字
【深い爽やかさ】2014/10/5
「るろうに剣心シリーズ」の荒唐無稽、「柘榴坂の仇討」の人情路線もいいけど、
やはり本格的時代劇には敵うこともない。
黒沢明が追及したシネマの輝きを継承していた《雨あがる》以来の真っ向サムライ物語だった。
物語の発端となる「お家騒動」は徳川時代にかかわらず、
いつの世にも持ち上がる馬鹿げた悲劇であるが、
ひとたび封建時代の主従関係、武士の生き様にかかわってくると
切々と日本人の血を湧き立たせるものがある。
今シネマの骨は「10年間の猶予の末に切腹する武士、とその家族の想い」である
すべてはお国(藩)存続のため、そしてそこに生きる多くの命のためにと
命を限って(切腹の日までに)藩の歴史編纂を成し遂げようとする主人公。
歴史とは善きことも不都合なこともすべてをありのままに記して、
後世の人々の鑑であるべし・・・とする主人公、
一方で、私欲のため、まつりごとを操る時の権力者には
真実の歴史は脅威以外の何物でもない。
どこかで最近よく聞く「歴史認識問題」、「教科書認定・採用問題」を思い出させる。
権力に抗い、己の筋を通そうとする主人公を演じた役所さん、
彼に感銘し武士の意味を深く考え直す、主人公の監視役の岡田さん。
性質の異なる二人の男優が上手くハーモニーしているのも見どころの一つだった。
もう一つの見所は、美しい山並みをはじめとする古い自然の姿、
そこに生きていく人々の細やかな日常描写だった。
人物一人一人が、武士も農民も生き生きとスクリーンによみがえっていた。
古い日本の愛情形態を表現した女優陣(寺島さん、原田さん)の控えめな存在感も、
やはり忘れることができない。
確かに本作は堅ぐるしい内容だと感じたが、
「かっこいい」とか「泣ける」とかがキーワードの作品にはない
「深い爽やかさ」があった。
「死」を素直に受け入れることを爽やかだと思うのは、
とても日本人的であり、そして危険なことだとは思うけど。
「るろうに剣心シリーズ」の荒唐無稽、「柘榴坂の仇討」の人情路線もいいけど、
やはり本格的時代劇には敵うこともない。
黒沢明が追及したシネマの輝きを継承していた《雨あがる》以来の真っ向サムライ物語だった。
物語の発端となる「お家騒動」は徳川時代にかかわらず、
いつの世にも持ち上がる馬鹿げた悲劇であるが、
ひとたび封建時代の主従関係、武士の生き様にかかわってくると
切々と日本人の血を湧き立たせるものがある。
今シネマの骨は「10年間の猶予の末に切腹する武士、とその家族の想い」である
すべてはお国(藩)存続のため、そしてそこに生きる多くの命のためにと
命を限って(切腹の日までに)藩の歴史編纂を成し遂げようとする主人公。
歴史とは善きことも不都合なこともすべてをありのままに記して、
後世の人々の鑑であるべし・・・とする主人公、
一方で、私欲のため、まつりごとを操る時の権力者には
真実の歴史は脅威以外の何物でもない。
どこかで最近よく聞く「歴史認識問題」、「教科書認定・採用問題」を思い出させる。
権力に抗い、己の筋を通そうとする主人公を演じた役所さん、
彼に感銘し武士の意味を深く考え直す、主人公の監視役の岡田さん。
性質の異なる二人の男優が上手くハーモニーしているのも見どころの一つだった。
もう一つの見所は、美しい山並みをはじめとする古い自然の姿、
そこに生きていく人々の細やかな日常描写だった。
人物一人一人が、武士も農民も生き生きとスクリーンによみがえっていた。
古い日本の愛情形態を表現した女優陣(寺島さん、原田さん)の控えめな存在感も、
やはり忘れることができない。
確かに本作は堅ぐるしい内容だと感じたが、
「かっこいい」とか「泣ける」とかがキーワードの作品にはない
「深い爽やかさ」があった。
「死」を素直に受け入れることを爽やかだと思うのは、
とても日本人的であり、そして危険なことだとは思うけど。