ピース オブ ケイク (2015)

文字数 691文字

【精一杯生きていけば朝飯前さ、恋なんて】 2015/9/9



多部未華子さんのヘタウマに感動しました。
主人公のどうしようもなく嫌味なナチュラル性格を演じるには可愛過ぎる多部さんであり、
昭和の言葉でいうと「惚れっぽい」根性に溢れている面倒な女性を演じるには
ナイーブな趣が強い多部さんです。
でも精一杯以上に達成していました。

この主人公のような女性はいつの時代の青春の中にも生息する厄介ものです、
遭遇し巻き込まれると大変です。
主人公は一人勝手な恋愛スタイルを、心の中では自省しながらも
ついつい本能に流されてしまう愛すべき人間らしい存在なのです。
この辺の主人公のチープな役作りは見事でした。

そして人は成長するものです、
彼女の自信に裏打ちされた自己主張、恋に諦観した佇まいに変化していく姿を
前段からのギャップを際立たせて演じ切っていました。
田口トモロヲ監督に期待していた演劇メソッドがこのケースでは奏功していました。

恋人役の綾野剛も持ち味のぼんやり男前でしっかりと受け止めてくれました。
本シネマは、このお二人の熱演を見守るだけでも一見の価値がありますが、
主人公がかかわっていく劇中演劇も気になりました。
前衛劇団のパフォーマンスもできればじっくりと観てみたかったのですが
そうもいかないでしょう。
本作 恋愛ストーリーのキーになる三角関係先の女性作家が
芥川賞(らしきもの)を取るのですが、
どう見ても主人公の恋愛症候群の方がよほど芥川賞ものです。
とはいえ、芥川賞がこんなにもカジュアルになったのは喜ばしいことです。
結論;
精一杯生きていけば、恋愛も仕事もへっちゃら、朝飯前です。
そんなことが伝わればいいな。

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