一枚のめぐり逢い (2012)

文字数 860文字

【テーラー・シリングにノックアウト】 2012/6/12



これぞ、《ハートウォーミング・シネマ》ぞ、日本人よ、特にTV業界よ。

心に傷を持たない人間などいない。
人は誰でも哀しみ・罪悪感・屈辱を心底に秘めて、
それでも少しずつそれらを克服して生きていくしかない。
とても当たり前のことだけど、
シネマから「そう、そのとおりだよ」と勇気づけられることがある。

本作もそうだった。
原作はベストセラー小説らしいが、
美しいルイジアナの自然の映像は想像力だけでは到底実現できるものではない。
男女の劇的なストーリーを紡ぐことにかけては職人的である本原作作家が描く登場人物は
確かに類型的かもしれない。
いや、そのとおり、まったく感動のステレオタイプである。

それでも、観客がシネマに類型的な感動を期待して悪かろうはずはない。
■イラク戦争で心に傷を持つ青年ローガン・・・なぜ自分だけが生き残ったのか?
■兄を戦争で失った美貌のシングルマザー、ベス・・・兄の死は意味のあったものなのか?
■周りに気遣うあまり並外れた個性を抑制しているベスの小さな息子。
■ユーモアの中に孫の苦悩を解明かそうとする賢明なるベスの祖母。
■権威にすがることしか自己を誇示できない、ベスに未練のある元夫の警官。
■戦死の状況がわからないミステリアスなベスの兄
これらの設定はシネマの歴史において、あまたのパータンの一粒であることは否定しない。

戦場で拾った「一枚の写真」に写っていたベスを探し当てたローガン、
そこから感動が滑り出していく。
ここでは全ては語れない・・・・僕の一番お気に入りのシーン。
「あなたは何のためにここまで来たの?」
「君に逢うためだよ」
この二人に幸多かれ・・・の想いに浸りながら劇場を去る、シネマファンの醍醐味だった。

ザック・エフロン(ローガン役)が話題だそうだが、何といっても僕は女優至上主義者。
テイラー・シリング(ベス役)が美しい、その笑顔で心が暖まる、ベスにノックアウトされた。
原作のキャスティングはスーパー類型的だが、
シネマのキャスティングは未知の躍動に満ちていた。

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