37セカンズ (2019) 

文字数 920文字

【新しい風が吹いていました】  2020/2/7



HIKARI監督第一回長編と言われても HIKARI WHO?でした。
ただ、主演のオーディションンで脳性麻痺の女性を抜擢したというニュースが
僕には衝撃でしたので、確認のためにKino Cinemaへ。
というのも、
僕のシネマへの想いのかなりの部分は、俳優さんの演技を見ることにある
・・・と常々発信していますが、今回のように役に適した人物を
オーディション採用する、それも脳性麻痺の役にそのままの人間を配する方法は、
僕の好みに反する方向だったからです。

特に「障害者」という名目で役者にはない存在感を演出したいというところに
ある種の差別感すら危惧していました。

僕の思い込み違いでした。
本シネマ全体がドキュメンタリーの趣に満ち溢れた作風でありながら、
強烈なメッセージを意図していることに気づきます、すぐに。
まず問題のオーディションで選ばれた主演の佳山明さん、
物語の主人公の力強い生き方とシンクロする演技を見せてくれます。
文字通りの体当たり演技が冒頭から続く中、
彼女以外での本シネマはあり得ないことに深く納得しました。

このシネマは加山さんのための作品になっていることにも気づかされます。
主人公の行動力、素直な言動はどうしても演じるご本人に通じるインパクトに満ちています、
これこそが演技の極致でした。

忘れていけないのは、彼女を文字通り公私でサポートしたであろう共演人の面々。
申し訳ないくらい、お顔とお名前が一致しない演技上手の方々のオンパレードでした
(静河さんはすぐわかりましたが カメオかな?)。

僕の心に突き刺さる言葉もいっぱいありました:
「障害者かそうでないかは関係ない、あなたがどうするかだ」
「実際の経験のない妄想だけの仕事には誰も感動しない」

今までの人生のなかで折に触れけ立ちはだかったピンチの時にこそ
役立ったであろう名言でした。
そうは言っても、
全般に漂う障害者であることの閉塞感、暗さは主人公一人の笑顔だけではぬぐい取れません。
タイの片田舎の青空と緑と鳥、このシークエンスでシネマの空間が広がりホッとしました。
そこで出会った許し合いの抱擁、帰国してからの償いの抱擁、
本年最初の、シネマ落涙でした。
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