天使を誘惑 (1979)

文字数 890文字

【ゴールデンコンビ発展的解消?】 1980/2/5



「イヤァ~、さすが敏八さん、やりますね!」
「ホリプロさん、さぞや気が気ではなったでしょうね?」
天下のホリプロ、ぐっと我慢してこんなふうに百恵を使わせたのは偉い。
どちらも大人でした。

この友和・百恵の作品は、ゴールデン・コンビ・シリーズといわれて久しい。
最近ではお約束のシリーズとして定着してきた。
シリーズの強みは、当たり前だが「ふたりの映画」ということだった。
今回、敏八さんがコンビを取り払ってしまった。
結論を言えば、敏八シネマでは友和が残り、百恵の場所がなくなっていた。
彼女だけがスクリーンで平坦に、ぎこちなく、溶け込めずにいた。
俳優としての存在感すらなかった。
すべては、二人が実生活で恋愛宣言をした時点から決められた
宿命のようなものだったのだろうか?
実はそんなことは全然気にもならないのだ。

友和・百恵の名を借りた敏八シネマ、それも上出来の部類だった。
ストーリーは、同棲している男女の成長を丁寧にきめ細かく描いていく。
最初はお茶の間テレビドラマもかくや・・・というほど、
百恵のぎこちなさが目に余ったが、津川雅彦がこれを一気に救った。
友人(火野正平)の結婚パーティ大乱闘にしても、
ありきたりの状況をあれほど生々しく見せたのは津川の力だった。
一転して後半の人間模様は多彩で強烈。
恋人の心の影にいた父(大友柳太郎好演)の自由な人生を知り、動揺する百恵。
幼いときからの不幸に負けず、並外れた意思を持つ百恵にも生じた
隙間のような弱さに気がつく友和。

たくさんの不幸、不誠実のなかで愛する人を見つけ、また愛に応える。
さまざまなエピソードが二人の周りでうごめき決着する。
ラスト近く、ふたりが語るシーン。
過去がオーバーラップでインサートされる、
カメラはずっと会話する二人を捉えていく。
話のやり取りで、少しずつ動くカメラ。
最後百恵のアップ画面でストップするまでの緊張感が印象深い。

ということで、残念ながら楽しくも幾分白々しい男女の愛を
年に2度発表してきた、本シリーズも大きく変わってしまった。

ぼくには意図的な発展的解消のように思えている、どうだろう?
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