オリヲン座からの招待状 (2007)

文字数 740文字

【鎮魂歌】 2008/7/13



まずは、本シネマを実際に鑑賞できたことに幸あれ。
大ヒット作「三丁目続編」にぶっつけた本作の意気込みはよかったが、
アンチ三丁目の僕ですら、
つい「あっちを先に観てからねっ・・・待っててねっ」と、
りえさんに約束したほど、この相手は化け物だった。
ある意味では、《オリヲン・・・》は戦う前に負けていたのだろう。
で翌週にはシネコンから消えていた。

DVDを待って待ってようやく4月、リリースの日に、あの渋谷Tには5個の空ケース。
5本分の枠しかない、世界遺産のような貴重なDVD だった。
毎度5個の空ケースをにらむこと3ヵ月、
手にした幸運この感激を抑えることができなかった。

原作を読んだのは致し方ないとして、
いつもシネマには予断も予備知識も持たない僕だけど、
お目当てのりえさんの役柄を完全に間違えて想定していた。
いや、シネマ自体が僕の思っていた浅田ワールドをあっさりと転覆してくれていた。

浅田さんには失礼だが、こんなにリリックなシネマに仕上がって見違えるほどだった。
昭和30年代の話とはいえ、現代パートをばっさり切り捨てた脚本の英断に、
シネマをテーマとする製作者のこだわりを感じて小気味よかった。

もっとも、
同じ昭和30年代をバラ色に描いた競合作「三丁目・・・」への対抗意識があったのかも?
僕の知っている昭和30年代は、
まさに本作のような鬱積したパワーが次の時代を渇望していた。
なぜ、本作が無謀にも「三丁目・・・」に突貫したのかが今はわかる。
本作は浅田ワールドを昇華させし、昭和高度成長期への鎮魂歌になっている。

シネマは一度死んだ。
TV業界のお情けで今復活したかのように見えるが、
TV番宣でしか映画館に人を呼べないシネマは、本当は亡骸なのかも。
このオリヲン座のように。



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