たたら侍 (2016)

文字数 578文字

【WALK DON’T RUN】2017/5/20



出雲(なのだろう)の美しい風景がこれでもかというほど大きくスクリーンを独り占めする、
あぁ、まだ日本にこんな景色が残っているのかと思う。
戦国時代末期の庶民の形態がきめ細かく再現される、人々は汚れ服装は粗末、家財道具も使い込まれている。
本シネマのテーマである「鋼づくり」の作業工程が細やかにかつ丁寧になぞらえる、あたかも記録映像のように。そこに見るのは出雲の人たちが如何に自然と共存して生きてきたかということばかりだった。

若者がいる、いつの時代にも夢見る若者がいる。
織田信長をヒーローとして称賛し自らも名誉栄達を願う若者が「侍」になる野望を持ってもおかしくない。

若者は故郷を出、厳しい現実に直面し敗れ去る、いつの世にもある構図だ。
シネマはここまでの展開を悠久の時の流れのように紡いでいく、でも決して退屈はしない。
こんな方法があったのだと思い至ったりもした、「日本」を表現するする方法だ。

後半からこの流れが急速になるのは、サスペンスタッチのアクションへの変換のせいだった。
キャスティングからすれば、堅いお約束の展開なのだろうが、前半の方向性を一気に消し去ってしまった。
侍になりたかった主人公が生き残り、プロ侍が討ち死にする皮肉は結局なにも響いてくることはなかった。

新鮮な「日本人像」を期待していたが叶わなかった。
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