LIFE!/ライフ (2013) 

文字数 794文字

【ぼんやりは心の滋養】 2014/3/23



心が洗われるような清々しいシネマだ。
映像の大胆な美しさ、音楽の洗練された響きだけで
シネマファンは幸せになれるものだ。
どうってことない、どこにでもあるような
中年男のラブコメディーと片付けるには「ハイブロウ」だった。

主人公はLIFE社でアナログ写真管理(ネガ管理)一筋に働いてきた。
彼にはときどき白昼夢で「ぼんやり」する癖がある。
そう、彼は僕であり・・・あなたであり・・・
すべてのサラリーパーソンの象徴としてスクリーンの中にいる。
仕事をして、家族を養っているからと言って「ぼんやり」していけないことはない。
ひとから、おかしな夢だ、妄想だと笑われる謂れはない。
情熱ある人間が真面目に生きるところに必ず「ぼんやり」がある。

シネマの冒頭で、夢と現(うつつ)が連続して描かれ、僕はその境を見極めようとした。
それは間違いだった。
人生は夢のごとく、そして同じようにそれは現なのだ。
まさかハリウッドの喜劇界の大御所にこんな東洋的悟りを教示されるとも思わなかった。

物語は、それでも確りと紡がれていく、
決してファンタジーとして有耶無耶ににされてはいなかった。
主人公(ベン・スティラー)が紛失したLIFE誌最終号の表紙ネガを探す旅が
メインストリームになっている。
偉大な写真家(ショ-ン・ペン)を追跡するプチミステリーツアーも面白い。
旅はグリーンランド、アイスランド、ヒマラヤ、アフガニスタンへと続く。
旅の風景はあまりポピュラーではないぶん、鮮烈な印象ばかりだった。
繰り返しになるが、映像そのものはシネマの大きな魅力である。

一方で、本シネマには上品なユーモアがいたるところに散りばめられている。
ベン・スティラーの面目躍如というのも失礼な気もするが、
スラップスティックとは違う、どこか懐かしい笑いに巡り合えた。

心の滋養だった、そしてとても暖かい気分で劇場を去ることができた。

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