エディット・ピアフ ~愛の讃歌~ (2007)

文字数 916文字

【主演女優、メイクアップ賞は至極当然】 2008/3/19



一国を代表する人気歌手の生涯を2時間あまりのシネマにしてしまう、これはリスキーだけど面白そうだ。
歌手はその楽曲で評価されるのが正当だろうが、それではシネマの絵にならない。
意地悪く言えば、聖人君主の生涯なんて興味を引くこともない、破天荒が望ましい。
ところが残念なことに、
フランスのヒロインということもあって、僕は今までエディット・ピアフのプライベートは全く知らなかった。さすがに代表的ヒット曲である「ばら色の人生」、「愛の賛歌」はよく知っていたが、それも彼女とは関係なく。
正常な音楽ファン・・・とはこういうものだろう。

また、くどい前説になってしまったけど、要点は:
「白紙の状態で、彼女の実像に触れることができて幸せ」
ということである。

シネマ全体はシリアスから微妙にずれ込んだ独特の雰囲気、セミ・ファンタジーだと理解した。
その功労者は、なんと言っても、マリオン・コティヤール、その人。
アカデミー賞(主演女優、メイクアップ)は至極当然、
もしかして本作は彼女の役作りに尽きる。

そう、思い切って
「勝因はマリオンの偉大なたくらみ」と決め付けてみよう。
歌は当然のこと、姿、容、仕草、しゃべり、息遣い、漂う匂いまで、深く細かくカリカチュアーしていたのでは?
僕は想像するしかないが、かの地の団塊世代にとって、この再現ヒロイン衝撃はいかばかりだったろうか?
国民的大歌手の生き様を、ギリギリと本人自身、その内面にに集約し、さらけ出してくれる。
こんな贅沢な、愉快な、面白いヒロインシネマはない。

デートリッヒ、マルセルとの伝説エピソードが輝きの中にちりばめられている反面、
意外にも彼女の私生活そのものは、悲劇や不幸が日常感覚希薄気味に抑えられて描かれる。
これをもってセミ・ファンタジー・シネマごとき発言になったのだけど、
よく考えれば、
ヒロイン、エディット・ピアフを本気でに地べたに引き下ろし,
生皮を剥いでその内側まで見せるはずもない。

ヒロインは、いつの時代にあっても謎と伝説に包まれなければいけない。
そんな夢多きリジェンドに僕は心から身を任せることができた、
才能あるものに幸多かれ・・・と願いながら。
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