ひとよ (2019)

文字数 676文字

【脚本負け】 2019/11/8



数多の「家族シネマ」に並び分けられる作品を目にした2019年でしたが、
その掉尾を飾ることができませんでした、
期待度が高かった分だけ今僕もひどく落ち込んでいます。

原作は不勉強ながら未読、舞台も拝見しておりませんが、
シネマとしての基盤レベルで足りないものがあった印象です。
訴えたいところのテーマは明らかでした
「自分たちのために父を殺害した母を許すことができるのか?」

フィクションとしてでも過酷な設定のテーマですから、
兄弟妹の胸の内をどう僕ら顧客に伝えられるかが完成度のポイントでした。

敢えて日常にべったり付き添った映像と登場人物の表情から、
その意図を読み取れと言わんばかりの平坦な展開が続きます。
いきおい、俳優さんたちが裡に込めた演技にのめり込み、
その逆に不調和なアクションに活路を見出していました。

そういえば、兄弟妹を演じた俳優さんのインタビューが予告編で流れたとき、
「白石フィルム」ブランドに意識過剰ではないかという懸念がよぎりました。
それが現実になってしまったようです。

白石和彌ブランドにキャスト・スタッフが自己陶酔した時、
それは顧客である僕を置き去りにするシネマに変身する時です。
シーンシーンの考え抜かれた構図、人物の想いを想像させるモンタージュなど
パート単位では輝きを見させてもらいました。
それが総合芸術としての統一、あるいは目に見えないパワーになったかというといえば、
最後まで未消化だったと思います。

鈴木亮平さん、佐藤健さん、松岡茉優さんの盲目的献身が無駄になったことが哀しい。
脚本が彼らの熱意に負けていました。
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