オードリー・ローズ (1977)

文字数 591文字

【布教の恐怖】1978/5/23


巨匠、ロバート・ワイズ監督がオカルト作品を撮ると聞いて、多くのファンはこれまでのオカルトものとは一味違う仕上がりを期待しただろう、
かって隆盛を極めたオカルトブームがとっくに過ぎ去ってしまっているとしてもだ。
巨匠にふさわしく、テーマ(霊魂の不滅)も展開方法も真正直な正攻法だった。

ホラーに大前提として仕込まれる大胆な仮説、あるいは嘘は従って本作には欠片もない。
東洋における輪廻転生または西洋においてはリーインカーネーションという哲学思想の枠の中で恐怖を構築しようとしている。
「ローズマリーの赤ちゃん(1968)」や「エクソシスト(1973)」における邪教崇拝、悪魔という大前提を手にすることができないまま、本作にある恐怖が、霊魂の不滅を信じるものとそうでないものとの争いに着地せざるを得なったのはその意味から必然でもあった。

オカルトシネマが提供する恐怖は計算しつくされた積み重ねの上にあり、それがエンターテイメントになるのとは大きな違いがあった。
霊魂不滅を日常世界で語る本作は、リアリティに富んではいるが恐怖の素材に乏しい退屈な展開に終始してしまった。

もしかしてローバーと・ワイズ監督自身がリーインカーネーションを信じていて、本作を通して広く世の中に布教しようとしていたとしたら、
そちらの方がもっともっと「恐怖」であるが。
(記: 1978年5月28日)
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