洗骨 (2018) 

文字数 609文字

【どこか遠い昔の懐かしさに包まれる】  2019/2/14



コメディタッチでいてシリアス、
そして得も言われぬ懐かしさに圧倒された、蓋し名作。

タイトルの「洗骨」の意味はさすがに事前に心に入っていたが、
果たして映像でどこまで見せてくれるのか?
そんな怖いもの見たさの興味があったこと、
奥田瑛二さんの姿を観たかったことが僕をシネコンに向かわせる。

シネマは葬儀のシーンから始まる、決して明るいオープニングではない。
妻に先立たれ呆然自失の夫(奥田瑛二)と沖縄の村に集う近親者たち、
この先も決して明るくなりそうには思えない。

それから4年半後 再び集いあう家族たち。
その目的は あの「洗骨」、
風葬した亡骸をもう一度きれいに洗うという儀式のため。

再会した家族はそれぞれ新たに大きな問題を抱えてくる。
「洗骨」のその時までにこの家族はあの昔の安らぎの家庭を取り戻すのか?

長編初監督の照屋年之さんの新鮮な感性が全編にみなぎっていた。
父親慟哭シーンを手前の長男アップで撮る、
父の言葉だけは長男を通りこして僕の胸を打つ。
そして厳選されたキャストが神々しいまでの演技を披露する。
そんな彼らをやさしく包み込む粟国の海。

僕の郷里でも小さいころ土葬からお骨掘りをしていた。
死者を間近に感じることは、生きる意義と責任を思い知ること。
本シネマでは洗骨は自分を洗うこと…だという。
いずれも、いつか遠い昔に教えてもらったことのように思い出した、
懐かしさとともに。
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