ワールド・オブ・ライズ (2008)

文字数 959文字

【嘘 山盛りでもいいじゃない】 2009/5/6



スパイの世界が「嘘の塊」なんてのはたわ言だ。
どんな世界も嘘が満溢、
人が欲望を抑えられない限り、嘘は永遠に限りなしなのだ。

正面切ったタイトルとは裏腹なまっとうとも思えるスパイ活劇に久々お目にかかった。
職人リドリー・スコットならでは、
シネマ冒頭から中東の乾いた危険な雰囲気が観るものを包む。

イラク、シリアなどへは行ったこともない僕なんかにはわかりやすい映像説明だ。
事実との誤差をほじくり返すことは「嘘の上塗り」だろう。
本シネマは決して真実を究明することではない、実際誰にそれができようか?
彼のすごさは淡々とエンターテイメントを紡いでいくこと、にある。

リドリーフィルム常連ラッセル・クロウに
今回挑戦するのがレオナルド・デカプリオ。
恐ろしいほど優秀なCIA現地担当官(デカプリオ)と
嫌味なほど悪賢い本局管理官(クロウ)の対比で楽しませてくれる。
お二人とも役作りに注力したのが見て取れ、
こんな役者を見るのはシネマファン、ユーザーとして嬉しいものだ。

2大スター対面シーンは期待したとおりエキサイティングだったが、
それ以上に二人の携帯電話やりとりが多い。
現場エージェントとラングレーの管理官を結ぶ手段は当然電話なのだが、
この管理官がやけに家庭的でおかしい。
子供たちの面倒を見ながら現場エージェントと殺伐とした会話を交わしているのが異常だった。
その見返りとして彼の小さな子供たちの「用語」がとても子供向けとは思えなく、
悲しいが笑える。
この父親、「子供なんて持つもんじゃない・・」などと自慢げに嘆きながら
せっせと非情な策略を仕掛ける。
これが「嘘の塊」の世界なのだ。

敵対するイスラム世界については見事に説明不足だが、
本シネマはその目的を待っているわけではない。
イスラム原理派メンバーは壮絶なアクションの「かたき役」以上の立場は与えられていない。
それに加えて、イスラムの女性看護師とデカプリオのロマンスなど、
どう見ても蛇足でしかない。

しかし、これがアメリカ的見解でかつエンターテイメントであることも明白である。
本作品は二人の名優がスパイアクションを手抜かりなく演技し、
リドリー・スコットワールドが緻密に構成されていたことで満足するべきものだろう。
そこに嘘が山ほど詰まっていてもいいではないか。

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