月の満ち欠け 〈2022)

文字数 511文字

【ブラボー 大泉洋】 2022/12/2


リーインカーネイション物語りは映像化の段階でメリット・デメリット諸刃の剣を持つが、本シネマにおいては生まれ変わりが複数のため映像における生まれ変わり主体のアイデンティティをさっさと放棄し、別テーマに絞り込んだことが見事に成功している。

生まれ変わり自体はあくまでも数奇現象として淡白にあつかっている。
その代わりとして「夫婦と恋人」に焦点を当てた映像の仕掛けが僕の涙腺を緩める。
クライマックスともいえる小学生と中年男の抱擁シーンはどう想像しても気味がよくないだろうと身構えたけど、ノスタルジックかつ美しいカットになっていた。
もう一つエンディングカタルシスにもなっている古いビデオシーンは言葉では言い尽くせない人間原始の感情である「感謝の想い」を揺り動かすシネマの観どころだった。

そんなセンチメンタルパートを一括して引き受けていたのが大泉さん。
良き家庭人(夫、父)から失意の抜け殻男の落差。
拒絶、疑惑そして悟りに至る心の変動。
彼無くして、「月の満ち欠け」はその歩みを進めることはなかっただろう。

進化し続ける大泉さんが地味で平凡な男を、ゴージャスに見せつけてくれた。
ブラボー
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