デトロイト (2017)

文字数 608文字

【アメリカファーストの欺瞞】 2018/1/26



1967年のデトロイト暴動の一夜を描く衝撃。
キャスリン・ビグロー監督が描く心の奥にしみ込む恐怖と不条理に金縛りになった。
彼女は「ハートをロッカーにしまいこんだ兵士」から
「ハートをむき出しにするCIA職人」を経て、
今作では「ハートのないアメリカ人」に至る。

デトロイト暴動のさなか白人警官の人種差別行動からモーテル宿泊の黒人青年3人が射殺される。
シネマは当時のTV映像をさしはさみながら、事件経過を微に細に再現しようとする。
登場人物は多数、実在のモデルのエピソードを丹念に拾い上げる、ドキュメンタリ―のように。
デトロイト市警の3名の警官の確信的差別と黒人への憎しみ、
そんな警官にかかわるまいとする郡警察、州兵たちの消極的人種差別、
片や、暴力で尋問されるのは
モータウン ドラマティックスのメンバー二人、警備員、復員空挺隊員らの黒人たち、
その中に紛れる白人女性2名、黒人と一緒にいるだけで侮辱を受ける、
事実ベースだけに、暴動のなかの虐殺事件はドラマティックに解決されることもない。

彼女が本シネマで世界に問いかけるのは、アメリカの欺瞞。
イラクに侵攻したアメリカ軍の欺瞞、
ビン・ラディンの大義を復讐で償ったCIA分析官の欺瞞、
そして、決してなくなることのない白人至上主義、
それは現指導者のもと
1967年デトロイト暴動を超える巧妙さとパワーを見せている。
アメリカ ファーストの欺瞞。


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