丘の上の本屋さん (2021)

文字数 655文字

【読書の自由】 2023/4/4


本屋老店主とアフリカ移民少年との友情を描くイタリア映画とくれば ついつい、かの名作を勝手に想像し観る前からあらぬ感動を期待することになってしまうのであったが、実際は製作者の強い思いがこもったとても教育的なシネマだった。

これをもって騙されたと勝手に怒る人もいるかもしれないし、基本的に読書が苦手な方には本シネマ主人公の行動すら理解できないだろう。
本屋というより、イタリア片田舎にひっそりとある小さな古本屋さんが物語の舞台、そこに訪れる顧客が多種多様、彼らが探している古本も当然のようにバラエティに富んでいる、
ヒットラー本から焚書に至る幅広さに、店主は生真面目に対応する。
本は何度も読み返されるたびに新しい価値を創造すると信じる主人公とお得意様との会話を興味深く観させてもらった。

本作の観どころとなっているアフリカ移民少年に本を貸出して読書を教えていく展開が日常の古本売買の中で淡々と挿入されていく。 最初はコミック本から始まり、「ピノキオ」、「イソップ」、「星の王子様」・・・・そして「白鯨」まで少年は読み進めることになる。
老店主が少年に最後に贈った本が「世界人権宣言」。

アフリカ移民少年はもちろん、いかなる思想、趣味、職業の人間でも本に接することの自由を通して、生まれながらの自由の大切さを訴える。
意外な結論に一瞬戸惑ったが、こんな当たり前だが大切なことを、古本を通じて表現するイタリア的パッションをしっかりと受け止めた。
センチメンタルなシネマなどではなかった。
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