怪物 (2023)

文字数 758文字

【柳楽優弥に立ち戻る名作】 2023/6/2


カンヌから絶妙のアシストを貰っての注目の公開となった。
しかし脚本賞というのは顧客(観客)にとっては曲者だ。
単純に言えば、シネマの流れ・テーマがストレスにならない脚本が観る側にとってはいいのであるが、その手のものではカンヌの御めがね適うわけもないからである。

実は本作にはもうひとつクィア・パルマ賞が授与されたという情報があった、これはLGBTQに関する作品へ与えられるものだとか。 予断を持たないぼくにとって痛恨の受賞ニュースになった。
予告編で男の子二人のカットが多用されていたことを思い出す。
久しぶりに鑑賞する前に脚本の示すの流れが見えてきた。

タイトルにもなっているように、本作は「怪物だ~れだ」の物語である。
母親(安藤サクラ)が怪物なのか?
教師(永山瑛太)が怪物か?
校長(田中裕子)なのか?
父親(中村獅童)こそ怪物?
いや日本社会がそもそも怪物なのだから、誰も怪物ではないのか?
核となるらしいGLBTQをもはや怪物と称することはナンセンスだとすれば、二人の少年は怪物ではない。

怪物の心を持った人間はいないが、怪物の心になる瞬間がある人間はたくさんいる、これがテーマだろう。 時として勇気を持つとき、心から心配するとき、誰かを愛するときに人は怪物になる。

さて、脚本の行方はどうだったかというと、カンヌが認めただけあってファンタジックな構成だった。 前半の怪物狩りシークエンスから打って変る後半の真実解明シークエンスへの転換が見事に難解だった。

二人の少年の微笑ましい愛情シーンに涙したのは脚本というより撮影の技だったかもしれない。
二人の少年の中に、柳楽優弥さんの面影を見つけ、ぼくはドギマギしてしまう。
是枝フィルムに魅了された昔を思い出した。
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