ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (2008)

文字数 837文字

【まっとうな人生】 2009/2/8



いいシネマを観させてもらった。
シネマを観ながらリアルタイムで考えさせられた。
そんな「間」が巧妙に設定されていた。
ベンジャミンとデイジーが愛を全うしようとする刹那刹那で問題提起があった。
意図された観客への問いかけ・・・と言い換えてもいい。

エリック・ロスの脚本どおり、
僕は自分の人生を振り返り、残りの人生に想いを馳せた。
勝手な想像だけど、
今夜レイトショーを満席にしたシネマファンもそんな想いで胸を熱くしてくれたことだろう。

ストーリーはシンプルかつ巧妙。
事前に否が応でも僕の耳に入ってきていたのは、
「一生を逆回転した男」の物語。
それだけではむろんTVのワイドショーネタにもならない。
デヴィッド・フィンチャーが突きつけてきたのは
愛する人、愛する家族との接し方だった。

「どんどん若返るってどんな感じ?」
「よくわからない・・・」
一度しか経験できない人生だからこそ、
そう「わからない」のだ。
もしかして、どんどん年をとっていくことだって理解できる人がいるのだろうか?
「永遠ってあるの?」
「今が永遠さ」
ベンジャミンは肉体だけが逆転する。

彼の喜び、悲しみ、怒り、畏れは皮肉なことにデイジーと同期する。
二人は人生のいっときにすれ違うかのように狂わしい愛に生きた。
永遠とは一瞬のこと・・・・わかりやすかった。

ベンジャミンの過ちも愛ゆえ。
赤ん坊の笑顔を見せて死を迎える幸せを選択せず、
愛するデイジーへの負担を予見し取り除く。
そこにデイジーの気持ちを封じ込めてしまった大きな間違い。
それも、ベンジャミンの深い愛のため。
それでも運命なのか、結局は愛を添い遂げる二人
惰性のまま連れ合いの介護に人生の最終章を過ごす夫婦とは違う二人だった。

ベンジャミンの人生を「数奇」なものなどとはいえない。
当たり前に年をとる中でたくさんの何かをなくしている人たちと比べれば、
ベンジャミン・バトンの人生は極めて「まっとうな人生」だった。

ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットに心から拍手。

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