プリシラ (2024)

文字数 973文字

【やはり ソフィアのジェンダーシネマ 】2024/4/12



「マリー・アントワネット(2006)」以来のソフィア・コッポラ監督・脚本・製作シネマ鑑賞だった、ソフィアらしさを大いに期待して拝見した。

プリシラに関してはエルビスの妻という記号でしか認識していなかった、エルビスがあまりにもスーパー過ぎたのでこれは致し方なかったのかと理解していたのだが、本作に触れて少し印象が変わった。

物語は1959年プリシラが西ドイツの米陸軍駐屯地でエルビスと遭遇するところから、摩訶不思議な同棲生活を経て結婚、長女出産、そして離婚に至る1973年までを、プリシラの視点で(ソフィアの視点でもある)描いている、プリシラ14歳から28歳までの14年間の女の闘いだった。

ということで、スーパースターのエルビスは完全に背景としてしか存在しない。
本編で彼の楽曲が使用されることもない、「ハートブレイク・ホテル(1956)はじめ全米ヒットチャートをにぎわした数々は、
プリシラと会う以前のもの、言葉を替えればプリシラに出逢った時のエルビスは、完全無欠のスーパースターだった。
   
本シネマでもエルビスの映画俳優への熱意が切々と語られ、実際にも撮影のため長期間自宅から離れる寂しさと共演女優への嫉妬が 語られている、「アカプルコの海(19630」で共演したウスラ・アンドレス、「ラスベガス万才(1964)」でのアン・マーグレットの名前がチラリと会話に出てきていた。

これらの女優とのスキャンダルはじめ、薬物オーバード-ス、宗教依存などなど、スーパースターにまつわるお決まりのトラブルが、じわじわとプリシラを苛んでいく経過もプリシラの視点からであり、エルビスの言い訳は一切お構いなしだった。

中学3年生の時からエルビスに恋い焦がれ、一切表舞台に出ることもなく従順な妻に徹したプリシラ。
エルビスの「俺の良い女」を演じ続けたプリシラ。
突然「違った道を歩んでいたのね」といって去っていくプリシラ。

淡々とプリシラの生き方を再現するなかに、ジェンダー問題の欠片もなかった。
しかし50年前、自分の生き方を貫くためにエルビスを捨て去った勇敢な女性プリシラでもあった。
  
ソフィア・コッポラの優しさと強固な想いが詰まった、これはこれでやはりジェンダーシネマだった。
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