ワールド・ウォー Z (2013)

文字数 990文字

【自然は最悪のシリアルキラー】 2013/8/11



近未来破滅SFが、小さい頃から、どういうわけかお気に入りだった。  
その理由は至極簡単かつ傲慢であるのだけども。
人類が絶滅しても、必ずそこには生き残る人たちがいる、
彼らこそが新人類としてより聡明な種となる
…その一人に自分がいると信じていたわけだ。
そこには子供らしい未来への希望があったようだ。

現実はというと、地球温暖化による生息環境の劣化、
科学技術と称した経済活動や暴力行為が及ぼした環境破壊、
身近で言えば核の脅威、・・・
武器であれ産業施設であれエゴむき出しの衝突の中、解決不能に陥っている。
そんな時には一度破滅的ディザスターでも起きろ!などと思う。
それを昇華してくれるのが「近未来破滅SF」の効能ではある。

また前置きが長くなってしまったが、
だから本シネマはとても楽しく(?)拝見できた。
シネマでの破滅要因は原因不明の感染パンデミックだが、
その原因は特定されないがディザスターありきなので、あまり気にならない。
人類はその原因を最後の最後まで気づかない、気にしない、安易に生きる、
そして宇宙にとっての地球(人類)の意味を考えようとしない。
シネマでは、徹底的にスピーディに文明が破壊され尽くす。

感染,伝染症であれば「ワクチン」を創れということになり、主人公はその調査を任される。
過去の幾多の破滅SFにあるようにワクチンは完成し、
生き残った人類はその教訓を生かせるのでしょうか
…というストーリーである。

フィラデルフィア → 韓国 → イスラエル → 英国 
と短時間に移動する主人公の不死身が絵空事だが、地球を救うヒーロだからこんなものか。
ワクチン開発のアイデアも底が薄いが、僕のような素人にはわかりやすい。
過去の破滅SF 名作にあった、悪の要因が最後まで見えてこない。

「渚にて」の核戦争、
「復活の日」の宇宙からのウィルス、
「コンテイション」の鳥インフルに相当するものが隠されたままだ。
現象としての「ゾンビ」が映像で恐怖を引き起こすものの、それとて原因は不明のままだった。
実はこの理由のない自然のテロが僕には一番印象的だった。
物語の中でウィルス学者が皮肉な言い方をする
・・・「自然は最悪のシリアルキラーなんだ」と。

地球が、宇宙が僕らに警告を発した後、とうとう連続大量殺戮を決意したように思えた。
そこに、僕は現実に符合する恐怖を感じていた。

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