最強のふたり (2011)

文字数 892文字

【介護は真剣に、人生は楽しく】 2012/9/22



ヨーロッパで驚異的な興行成績を樹立した感動のシネマが日本に
・・・というのが宣伝文言だ。

ストーリーはいくら実話をベースにしているとは言っても、
残念ながらさほどユニークではない。
深刻な障害を持つ金持ち(フィリップ)と、
彼を看護する無教養な人間(ドリス)との心のふれあいを描いている。
宣伝コピーによれば本シネマはコメディーだそうな、それも良質な。

脚本はフランスらしいひとひねりした優れたレベルであり、文句の付けようがない。
障害者(フィリップ)の一番の願望である《恋愛、性愛》にフォーカスした展開は
シンプルにして共感を誘う。
それでもしかし、オープニングからエンディングがループで結ばれる策は
特に目新しくも無い。
一方のアンチヒーローである底辺で必死に生きる黒人(ドリス)の
プロフィールも(実在人物であるが故か)類型的ですらある。
破れかぶれで介護する中で、友情が育まれるのは彼の無謬性ではないことも明白である。
介護人の職をいっときのバカンスぐらいに考えて、すき放題していたとしか思えない。
スポーツカー、マリファナ、娼婦、オペラ、ロックなど既成ルールをどんどん取り壊していく。
破壊者は時には権力者には「めでたいものよ」と興味されることがある。

ここで本シネマのふたつの観方が明確に分かれてくる;
①この金持ちの立場で自らの人生を予見する
②介護人の側から世の中を、自分の行き方を見直す

鑑賞している間、僕はどうしても
②の目線になりきれず、ともすれば①の不幸な立場になりそうだった。
そして、結局はレベル最下位の
「金があるから何でもできる、障害者であっても」という意見に落ち着いてしまう。
実際の自分の境遇を省みて、このシネマの夢物語に感動するのがせいぜいだった。

もし、(後から気づいたのだが)介護人の身に自分を置き換えれば、
自分が健常者であることに感謝して人生に立ち向かうことができる。
どうやら実在のドリスはそうして成功したようだ。

ヨーロッパの人たちが、共感し夢見たのはこの②の立場だったのだろう。

僕はそこに至るには若干年をとってしまった、無論金持ちでもない。

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