パッション (2004) 

文字数 715文字

【充分に立派な宣教師でした】 2007/12/24



クリスマスイブにイエス受難物語を鑑賞するのは、冒涜なのか賛美なのか?
いずれにしても、真宗念仏者である僕には大きなバチがあたるという事もなかろう。

メル・ギブソン監督作品という魅力は強烈だったものの、
抹香くさいシネマは敬遠した経緯があった。
最新作 《アポカリプト》に誘起されて再チャレンジしてみた。
全編通じて、血と涙にあふれてはいたが、
それを凌ぐ「抹香くささ」は予想したとおりだった。
多数の欧米人精神的拠りどころとなっている「イエス」の死に様が、
生々しく再現されている。

イエスは、奇跡をおこなう。
イエスは、しかし、自らを奇跡で救うことはしない。
イエスは、死ぬこと再生することを知っている。
イエスは、死においても敵に福音を授ける。
イエスは、愛するものより憎むものに愛を与える。

こんな教えを僕は受け取らせていただいた。
宗教論議をするほどの知識はないけど、
わが親鸞の教えに一見似ているところがある。
親鸞曰く、「善人なおもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。
その違いは能動的か、受動的かの差、これが実は大きな差ではあるが。
イエスは自らを犠牲にして教えを示したのに対して、
親鸞は本願他力を押し通す。
世界で宗教戦争が勃発することになんら不思議を禁じえない。

そのようなことを考えさせられたことだけとっても、
メル・ギブソンの意図に嵌まったんだなと感じた。
稚拙な印象でしかないが、
イエスはアグレッシブでエンターテイニングな星の元に生まれた預言者だった。

今宵日本では、
彼の誕生日を宗教の壁を越えて皆がお祝いする
(?すくなくとも幸福を喜び合ってケーキを食べる)。

メル・ギブソン監督、充分に立派な宣教師でした。

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