あるいは裏切りという名の犬 (2004)

文字数 996文字

【凋落】 2007/6/16



シネマコンプレックスが大流行、僕の町にも17スクリーンあります。
テレビ界にTOBされ救済されるまでのシネマの凋落を見聞きした身としては、
まさに隔世の感です、ありがたいですね。
僕が若い頃なんかは(これを枕詞にする団塊世代に、これから慣れておいてください)、
そして映画が元気だった頃は;
フランス映画はおしゃれ、
イタリア映画はちょっとマニアック、
日本映画は見事に日常、
ハリウッドは独善だけど面白い、
とカテゴリー分類してました、自分だけ用でしたけど。

そう、凋落といえば、フランス映画。
なかでもフレンチノワールと、もて賞された伝統の継承を見なくなって
久しいものがありました。
そんなフレンチノワール復活、との触込みの本作です。

《あるいは裏切りという名の犬》とは、叙情的を超えた大仰な物言いですね。
フレンチノワール復活再生の意気込みを感じてほほえましい思いです、
配給側も少し異常興奮気味なのでしょうか?

僕の印象は、「それでも残念ながら惜敗」というところです。
ノワールの言葉にこめられた、行き場のない閉塞感、焦燥感を感じられなかった、
これに尽きます。
本作も、最近のポリスアクションでよくお目にかかる
スーパーバイオレンスのやり取りを媒介に、
友情や裏切りをハイテンポで描いています。
現代の生活リズムにはピッタリ、何よりも不条理感を感じる暇すらありません。

本当に面白いストーリーです、実話に基づいているとすれば、
パリ警察にも「凋落」の言葉を捧げたいものです。
画像自体は、たしかにダークトーンを意識しながらも、
はっとする色彩の出現に眼を見張ります、フレンチ真骨頂です。
今、フランスを代表する男優ふたりの渾身の演技にお国では絶賛だったそうですが、
僕にはとてもそうは思えません。
ジャン・ギャバン、アラン・ドロンを出せとはいいません。
ジャン・ポ-ル・ベルモント、リノ・バンチェラに代わるものは誰なの?
なんて無体も求めません。

誤解の無いよう、オートゥイユ、ドパルデューはおふたりとも名優です。
でも、僕は彼らから匂いをかぐことが出来ません、あのフレンチノワールの。
ノワール俳優は、もしかして、特殊な伝統芸能に属する才能なのかもしれません。
本作は久々に観たフランスの上質なアクションシネマです、
気合が入っているのが観ていても伝ってきます。
いつか、この情熱がフレンチノワール再生に繋がると信じています。
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