許されざる者 (1992)

文字数 664文字

【クリントの軸、動かず】 2007/1/18



監督16作目、長いウェスタンシネマキャリアの締めくくりとなった秀作。
今となっては笑い話だが、
当時このシネマを実際観るまで、ジョン・ヒューストン監督作品のリメイクだとばかり思いこみ、暗闇のなかで戸惑い慌てた記憶がある。

さて、クリントが集大成として暖めてきた企画だけあって、
彼の主張が余計を削ぎ落として僕には伝わってきた。
まず何より、偏見に対する嫌悪。
人種、性別、職業による差別、虐待を極端なまでに非難している。
そして、権力への嫌悪。
この場合権力をもてあそぶことへの抵抗が正確な表現かもしれない。
究極の判断である、善と悪に関しては、
面白いことにクリントは主人公を敢えて悪に設定している。
マニーには、どう贔屓目に見ても善なる素質は無い。
改心しきれずに殺し屋に復帰する生まれながらの悪だ。
しかし、観客がカタルシスを感じるのは、
この悪が「偏見」、「権力」に打ち勝って見せるからであり、
弱者にはことのほか優しいからである。

それと歩調を合わせるように、
クリントが過去に思いをかけ問題提起し支援をしてきた弱者が、
ここ最終章に至り静かではあるが自分を主張し始める。
もはや、虐げられるだけの存在に甘んじてはいけない・
・・というクリントの気持ちがあった。
彼らとは、女性であり、黒人であり、アメリカンインディアンであり、子供たちだ。
そして権力からは遠く離れている。
マニーはひとかどの人間ではなかったが、
少なくとも友達を大切にした、家族を守った。

これがクリントの「ウェスタン」。さすが最後まで軸はぶれなかった。
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