三度目の殺人 (2017)

文字数 740文字

【「誰も知らない真実」を裁く不条理】 2017/9/10



ミステリアスな裁判劇でもなく、新犯人追及のサスペンスでもなく、
ましてヒーロー活躍のハートウォーミングドラマでもなかったが終始押し寄せては返す圧迫を感じた。
殺人犯(役所広司さん)、弁護士(福山雅治さん)、被害者の娘(広瀬すずさん)三人三様の真実のかたちが切ない。
といって、三人が口にする物語が真実であるとは限らないという面白さに僕は振り回されてしまう。

殺人犯は最初からその供述を変え続けている、何かを隠しているのか?
弁護士は真実より審理に有利な証拠を優先する、それが職業だと自虐する?
娘は大きな秘密を隠しているが嘘なのかもしれない?
おまけのようだが、弁護士の娘はコロッと父親をだます?
今の時代にかかわらず人の心のなかは誰にもわからない。

シネマは、しかしながら、淡々と裁判進捗状況を追いかけていく。
その中に現れてくるのは現行司法の問題点。
「法律っていい加減なんですね」
「被告人を理解したり寄り添うことは必要ない」
「裁判官、検察官、弁護人は司法といういわば一つの船にいる運命共同体だ」
「審理処理件数が評価の対象だから裁判官も大変だ」
「審理経済性を考慮しなければいけない」
司法制度へのストレートな問題提起がなされていく、これこそは是枝作品の真骨頂だった。

基本的な疑問をシネマで訴える、それも著名俳優をキャスティングすることでインパクトを持たせる。相変わらずの是枝節にぶれはなかった。

老婆心:
本作は僕のホームシネコンでは最大収容人数(630人)のスクリーンで上映された。
福山/役所の両エースが顔を寄せ合って競演するシーンに違和感充溢。
アイドル系キャスティングへの忖度だろうが、できればこじんまりした落ち着いたスクリーンで観たかったな。
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