判決、ふたつの希望 (2017) 

文字数 890文字

【本作を貶めた邦題】  2018/9/6



ではタイトルはどうあるべきだったのか?
そのまま「侮辱」でいい、ちょっとゴダール風でいい。

シネマそのものはスーパーグレイトだった。
レバノンでしか製作できないシネマ、シネマが僕の先生だとすれば
本シネマは未知をエスコートしてくれる心優しい先生だった。
シネマ冒頭で、
「本作はレバノン政府の見解ではなく監督・作者の意見である」との但し書きが。

製作者の腰が引けているわけではない、
そのくらい本作に使われる「言葉」と「映像」は危険なもの、
暴力同様に、いやそれ以上に。
これが本シネマに込められた熱いメッセージだった。

シネマのジャンルとしては「法廷もの」、レバノンの法制度を垣間見ることができる。
代理人弁護士の弁舌合戦も、ありきたりとはいえ僕を引き込む仕掛けがされている、
法廷ドラマの水準は超えている。

そして、全編にひたひたと漂っているのが「パレスチナ難民問題」、
パレスチナの大義の旗印のもと、レバノン国民に積み重なる不満、憂鬱。
100万人ものパレスチナ難民に母屋を取られそうになっていても
国連、NPO,キリスト教等から加わる圧力
「パレスチナ難民を大切に!」
一方でレバノンが隠してきた過去の内戦の汚点、
虐殺された国民と闇に葬られた真実が解き放たれる。

法廷ドラマでありながら法律では何も解決できないことを示唆してシネマは終わる。
何処に希望が見いだせるというのか?
パレスチナ難民だけの問題ではない・・・
国家があり、宗教を信じ、憎しみを持てば「侮辱」はいつもそこに付きまとう。

これは中東の特異な状況であって、日本には関係ないということはできない。
難民を日本が受け入れるべきかを経済面で論議するような問題でもない。
一度日本人が難民になった場合を考えたほうがいい、仕事や家庭は無論、
パスポートのない日本人がどうやって世界で生き残るのか?
そんなことを考えたら、難民受け入れに抗うことは僕にはできない。

難民になることはないと言い切る自信があるのか日本は?
今日も震度7の地震があった、いつ日本全土が海に沈むことになるかもしれない。
本当に難民を拒絶するだけでいいのだろうか。
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