チェ 28歳の革命 (2008) 

文字数 928文字

【歴史に学ぶ、歴史は繰り返す】 2009/1/12



ソダーバーグ監督の手法はどこまでもクール、
ゲバラのクールさにいささかも負けていない。

パート1をつらぬく、国連演説とフラッシュバックするゲリラ戦はリアル極まっている。
いっとき僕はあのキューバ危機のニュースフィルムにいざなわれた感すら覚える。

国連(ニューヨーク)シーンはモノクロ画面、クローズアップを主とした手作り感にあふれ、
今現代にも君臨する『革命の象徴たるチェ』が創造されていく過程が見られるのに対して、
山中ゲリラから都市ゲリラまで数々の局地戦闘を克明に再現するシーンは、
ロング、俯瞰ショットを多用し『革命家チェの実像』が赤裸々に再現されていた。

シネマとしては、メリハリの効いた中で淡々と歴史を語るかなり
ハイブローな作品になっている。

ところで今なぜ『チェ』なんだろうか?
昨夜観終わった後には気づかなかった想いに今朝ふと思い至る。
キューバでは今、チェの友にして指導者だったカストロが
実際にその役目をまっとうし終え、
新しい体制を模索している、そんな時代だからだろうか?
確かに、チェが目指した中南米における人民解放革命はもはや世界の話題に上ることなく、
取って代わったのはイスラム革命。

アメリカが喧伝している「テロとの戦い」の政治構図に『チェ』の影、
いや、本シネマに描かれる『チェ』の実像がかぶさってきた。

当時のニュースフィルムを再現したようなモノクロフィルムには
チェを糾弾するニューヨーク市民が映し出される。
似たような映像、最近も見かけたような気がする・・・9.11テロのときに。
アメリカの国益を脅かす、またその恐れがある国家や指導者への嫌悪は今に始まったものではない。
『祖国さもなくば死』と鼓舞し続けたチェ、
その存在がイスラム教指導者に引き継がれていると、
ふと、今朝思いついた。

なんとも感受性の鈍い自分だろうか、やはり平和ボケもここに至れり。
チェを反体制の象徴としていた遠い過去の熱い気持ちすらすっかり忘れてしまった。

そんな折のこのシネマ、
ソンダーバーグがそれを意図したかどうか忖度するなど無意味だろうが、
僕はしっかりと覚醒したのだから、
ソンダーバーグはたいしたクリエーターに違いない。

パート2にも期待したい。

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