リトル・ランナー (2004)

文字数 780文字

【すべてはノープロブレム】 2007/8/25



《炎のランナー》でも爽やかに感じたスポーツと宗教の関係が、本カナダシネマでもズンッと前面に出ている。
昏睡状態の母を目覚めさせるため、ボストンマラソンで優勝する、
すなわち奇跡を起こすことを神に誓う14歳の少年。

この二大テーマ「宗教とスポーツ」が、ちぐはぐだった。
まずは宗教、
時代は1953年、すくなくともカソリックの影響力は現代から比べれば強大だったはずだ。
神の奇跡で少年は優勝し、母は目覚める・・・・というあけすけな展開だけはさすがに避けているが、徹底して宗教の善徳の賛美に終始しているやに思わせている。
その背景で、しかしながら、人間が神の力に頼ることなく自分の意思で生きることの大切さが、かすかに遠慮深く描かれているのも事実。
この優柔不断で中途半端な両面主張が、本作の印象を弱めているのが残念なところである。

もうひとつはスポーツ、このケースはマラソン、
普通の少年が短期間でマラソンランナーに変身する、それもボストンに出る、それも優勝を狙う・・・なんてのは、おとぎ話ならいざ知らず現実的でないこと甚だしいかぎりだ。
三浦しをん感動作(風が強く吹いている)でも、ビギナー駅伝チームを箱根で優勝させなかった代わりに、それに倍増す感動を仕組んだことに比べれば、本作はマラソンの駆け引きに関する工夫もされていなければ探求の跡すら見えない。
シネマ作法を越えたお手軽さに唖然としてしまった。
けっして僕自身マラソンランナーだから揶揄するのではなく、あまりの無理解に悲しさすら感じた。

・・・・・とここまで論じてきてふと気づきた。
そういえばオリジナルタイトルは、《セント・ラルフ》、
ラルフは少年の名前。

あちゃ~、これって聖人のお話だった、
冒すべからずの聖なるファンタジーじゃないですか。
再びそういえば、ステンドグラスに・・・。

すべてはノープロブレム、です。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み