ゼロ・グラビティ (2013) 

文字数 986文字

【「キュアベッキ・ツアー」は地球的心だった】 2013/12/17



キュアロン製作・脚本・監督・編集に代表されるワンマンシネマは
「天国の口、終わりの楽園」など3点見知っている。
かれが撮影をルベッキに委ねたシネマが僕のツボにはまることも 以前から気づいていた。
キュアロンの世界観とルベッキの映像センスは、
必ず信じられないような「キュアベッキ・ツアー」に僕をいざなってくれていた。

そして、「グラヴィティ」。
エマニュエル・ルベッキがCGソフトを駆使し、3D世界を創ると、
もう僕は夢の世界の中、呼吸すらおぼつかない。
気の毒なのはビッグネームスターかもしれない。
役者はCG時代に不要になるという恐ろしくも魅力的な預言すら思い出してしまう。
宇宙服とヘルメットから覗き見ることができるのは顔、
そして電波に乗った声だけがスターの証しなのかという杞憂は、

しかし後半あっさりと覆される。
このあたりの脚本小狡さ、しっかりスターを使い切る監督力に、
僕はキュアロン健在を確認してしまう。
ストーリーは古典的な危機脱出ものだった。
生き残るためには何でもする、決してあきらめないぞ
・・・という心構えはいつの時代にも特上のカタルシスである。

主人公たちが思いつくいろんなアイデアに素直に感心した方がいいだろう。
それにしても、ロシアや中国の宇宙ステーションが平和的に活用されるのが
地上とは大きな違いだった。
地にも平和を!

肝心の重力(グラヴィティ)、
タイトルにまでしたキュアロンの意図が少し伝わってくる。
【重力を古典的魔術から近代科学の域に導いたとされるニュートンの重力理論。
この理論は、しかし、魔術的遠隔力、占星術が数学的法則として合理化されてきた事実がある。
今や魔術は自然科学の議論対象ですらなくなったが、
その揺籃期の魔術的役割を過小評価してはいけない】
(引用・山本義隆氏)

アルフォンソ・キュアロンはかって哲学も学んだと聞く。
地球に生還する主人公に、魔術が降りかかる。
呪文のような地球の心が呼びかける…帰っておいで・・と。
主人公が水面に浮上するとき、両生類が同じように陸上を目指す浮揚シーンがあった。
そう、水中でも重力は無くなる。
ヒトは陸を目指す、上陸して地球の重力を感じて微笑みを浮かべる。
未来へ進む決意をする。
そして崇高なる第一歩を踏み出す。

今回の「キュアベッキ・ツアー」も愉しさ、賢さが一杯詰まっていた。


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