アンダーカレント (2023)

文字数 589文字

【調和と余韻の心地よさ】 2023/10/11


シネマらしいシネマ、安心して観ていられるシネマ、久しぶりの快感だった。
映像の一コマ、音楽の一瞬、ストレスのない編集、俳優の気概、その他シネマが総合芸術であることを証明するすべての要素が、調和していた、綺麗に。

原作コミックは不明な身なので、脚本の妙を評するわけにはいかないが、無理、綻びのない流れが気持ちを楽にしてくれる、けだし名脚本だろう。
銭湯を日常と言い切ってしまえば、その日常を脅かすとはいえ今どき些細な謎が本作全体を覆う・・・優しい夫の失踪という。

ある日突然愛する人のアイデンティティが崩れ去るというテーマは「ある男」でも異彩を放っていたが、実は決してまれな事件ではない・・・そう説教するのは本作の狂言回しともいえる一風変わった私立探偵(リリー・フランキーさん怪演)。
シネマは主人公銭湯の女将(真木よう子さん名演復活)が立ち向かう夫(永山瑛太さん好演)の失踪、過去の忌まわしい記憶、 そして謎の従業員(井浦新さんこれまた好演)との心の交流を軸に、テーマの重さにも関わらず軽やかに展開する。
最後に訪れるカタルシスの深い余韻、名演者勢ぞろいもあって今年拝見した邦画のベストだった。

老婆心:
銭湯の女たちが輝くのはどうしてだろう、「湯を沸かすほどの熱い愛(2016)」の宮沢りえさん然り、本作は真木さんの代表作になった。
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