ママの遺したラヴソング (2004)

文字数 716文字

【心優しい人たちのちょっとしたスキャンダル】 2007/9/15



死んでしまったママの怨念のような愛がシネマ全編に漂い、
登場人物にへばりつく。
観る僕も強迫概念のようにママの影に憑きまとわれてしまう。
でも、決して不愉快な感覚ではなく、
いやそうではなく、それは暖かく心地よかった。

ママとの記憶もほとんど無くお祖母さんに育てられた18歳のパーシー(スカ-レット)が、
母の遺産のぼろ小屋に一人帰ってくる。
そこ居候していたボビー(トラボルタ)とその仲間たちとの交流が、ストーリーの骨子だが、
この連中みんなあやしい、何か隠しているようだ
・・・・でもパーシーを見守る眼差しは慈しみに満ちている。

その理由は、ママ。
ジャズシンガーだったママは、
ここニューオリンズの男たちの女神だった。
女神の子が戻ってきて、さてどう対応していいか男たちにはわからなかったのだ。
少しずつ緊張が解きほぐされ、男たちからこぼれ出る言葉は
・・・女神への愛だった。
ボビーも大学教授の職を捨ててママのとりこになった男の一人、
今は日々酒に生きている。
彼が好んで使う高名作家の引用句数々は終始空虚だったが、
彼の生き方そのものだったのだろう。
一方、小さい頃から母の記憶が無いパーシーは自分で
「母との思い出」を創り心の支えにしていた。
《ちっちゃい頃パーシーったら、こんなこと言った、あんなことした》
まで自分で作り出す悲しみ。

ママの魂はパーシーと男たちをどういざなうのか? 
ニューオリンズ、川辺の風景に溶け込む心優しい人たちのちょっとしたスキャンダル。
シネマの核になりながらけっして姿も声も現さないママ、
とてもしゃれた演出だった。
女性は偉大、
男は?・・・
そうだな、男も可愛いものだと実感した。
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