アルゴ (2012)  

文字数 831文字

【間違いなく、ベンは名監督】 2012/10/28



イラン米大使館人質事件の時、カナダ大使館に逃れ脱出した6名がいたことは初耳だったけど、
本シネマが事実に基づいた再現ドラマだということは、よっくわかった。
この工作に実はCIAエージェントが介在していた、
しかしその奇跡的成功は当時は隠蔽されていたことが
本シネマの骨子なんだろうな。

この救出作戦は事実なのに、というか事実だからなのか、
その緊張感はフィクションとは一味二味違う。
作戦のキーワードは一言で言えば「運」、
このミッションは時間も計画も不足した中での運任せ、ウン、ウン。
この非現実感が再現ドラマに漂う異常な焦燥感と並列されていて、
本シネマ独自の価値を大きく高めている。
救出に来た主人公も救出される6名も脱出に失敗すれば公開処刑される危機的状況の中で、
頼れるのは007でもイーサンでもなく「運」しかない・・・現実はそんなものだろう。
このあたりを観間違えると、なんだか薄味のサスペンスシネマと勘違いしてしまう恐れがある。

実際のニュース映像を、要所で差し挟む構成はいやがおうにも
6名の追いこめられた立場を一層駆り立てる。
ミッションといってもたった2日間のイラン潜入なのもリアリティがあって納得した。
なんとしてでも早急に救出する・・・主人公の気持ちが熱かった。

主人公究極の決断、国の方針に従って作戦中止そして6名を見殺しにするか、
命令に反して無謀に脱出敢行か?
彼は英雄になろうとしたのではなく、一人の人間、一人の父親としての尊厳を持とうとした。
ベン・アフレックが伝えたかったのは、この気持ちだったと確信した。
誰もがこんなすばらしい生き方はできない、
たとえそうしたいと「運」に頼ったとしても。
いいシネマだったな。

老婆心:
事実の再現だけじゃない、
CIAに協力するハリウッド映画人の協力がとても愉快に描かれている。
大物プロデューサーが意気に感じてプレスを騙すシークエンスはけっこう笑ってしまう、
いくぶん楽屋落ちネタではあるが。

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